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あなたのおうちに住んでも……いいですか?
大道寺氏は困り果てていた。
ブログの妖精と称する電波な少女を家まで連れ帰ることになってしまったからだ。
お巡りさんに助けを求めたのにスルーされた。
困っている少女を氏が自宅にお持ち帰りすることを黙認したということなのだろうか。
氏は一つだけどうしても確かめておきたいことがあった。
それは本当にココロたんの姿がお巡りさんには見えなかったのだろうか、ということだ。
氏は自分の部屋に入る前に、隣の部屋へと向かった。
氏の後輩の沢村君が住んでいる部屋だ。
「どうしたんですか、大道寺さん?」
チャイムを鳴らすとほどなく沢村君が姿を表した。
「一人?」
氏は尋ねた。
「今は俺一人ですよ。まだここに知合いもいませんし、引越しの片付けもしないといけないので」
「いや、そうじゃなくって、今尋ねてきてるのは僕一人だけかな?」
沢村君は氏の質問の意図が全く理解できないようだった。
当然といえば当然なのだが。
「…どういう意味ですか??大道寺さんだけじゃないですか??」
「この辺に女の子の姿が見えたりしない?」
氏はココロたんの両肩に手をそえ、沢村くんに見せるように自分の前へと導いた。
「…すみません、生憎俺には二次元の少女を見る能力がないのですが…」
「じゃあ見えないの!??」
「大道寺さん以外の姿は見えませんが…何かあったんですか??
部屋に少女の幽霊でも出ましたか??」
始め、沢村くんはいつもの戯言だろうと思って聞いていたようだが、
氏がいつもより深刻な面持ちであることに気づいた。
「環境が変わって疲れてるんじゃないですか?早く寝た方がいいですよ」
と少しばかり心配しているようだった。
氏は諦めてココロたんを自室に入れた。
さてこれはどうしたものかと考えた。
なぜココロたんの姿が他の人には見えていないのか。
ひょっとしてココロたんは本当に妖精なのだろうかと信じはじめていた。
だとするならば、心の澄んだ人間にしか見えない妖精なのだろうか、と。
ではなぜ氏のところにココロたんが現れたのか?
それはきっと日頃の善行の数々に神様が遣わしてくださった御褒美に相違ない、と理解した。
「ココロは、ブログ妖精学校に通う、ブログ妖精のたまごです。
お料理とかお掃除とか頑張ります!だから、あの……あなたのおうちに住んでも……いいですか?」
氏はう〜んと考えた。家に帰りたいと言っていた子がなぜ家に住むと言い出しているのか。
まぁどうやったら帰れるのかなんてわからないのだから、
それまでの間ということなら構わないだろう。
もちろんそれが100年後くらいになって、
三次元の物体を圧縮して通信回路上を転送する技術が確立されない限り不可能な事だとしても、
それでも一向に構わないはずだ。
このまま外に放り出すなど大人として許されない。
困っている少女を手厚く保護するのが大人の義務だからだ。
そもそも神様が遣わして下さった御褒美を突き返すなどという罰当たりな事が許されるはずもない。
そしてこのままつまらないことを考えつづけても埓が明かない。
氏は決断した。
「いいよ」
「よかった…。ココロ安心したらお腹が空いちゃいました」
と言うものだから遅い夕飯を食べることになった。
引っ越してきたばかりでまだ片付いてもいない氏の部屋に食べ物などあるはずもなかった。
氏は自慢の愛車で買い出しに行くことにした。
「ココロも着いていっていいですか?」
ということで一緒に。
氏の車を見てココロたんは驚いた。
「すごいです〜!ココロこんなの初めて見ました!!」
大きな目をより大きく見開いて感嘆の声をあげた。
それは車という文明の利器を初めて見たからなのか、
あるいは氏の愛車のような特殊な外装の車を見るのが初めてだからなのだろうか。
「車を見たことないの??」
「ブログの写真とか動画でなら見たことはあります。でも実物を見るのは初めてです!
ブログ妖精界には車がないんですよ」
「そっか。まぁ1Tbpsで走れるなら車なんて必要ないよね」
「ココロ、ドキドキです!」
氏が助手席のドアを開けると、ココロたんははしゃぎながら乗り込んだ。
当然ながら氏の愛車には学堂用チャイルドシートなどあるはずもないのだが、
きっと道路交通法は妖精には適用されないだろう。
「ココロ、子供じゃありません!大道寺さんよりもお姉さんなんですよ!!」
やはり氏の車はこの町でも目立っていた。
道ゆく人全ての視線が氏の車に釘付けになってしまう程だ。
氏の車は再びなのはカラーに変わっていた。今度はエクセリオン仕様なのだそうだ。
不心得な車に対してディバインバスター・エクステンションを放つことができるらしい。
「ココロあそこがいいです!」
と指さしたのは黄色いM字の看板がくるくると回っているファーストフード店だった。
「ココロたんは何が食べたい?」
「大道寺さんと同じのがいいです。あと、メロンソーダが飲みたいです!!」
「ご注文は1セットでよろしいですか?」
とマイクから店員さんの声が尋ねた。
「2セットずつ下さい」
「メロンソーダはLサイズを5つ下さい!!」
ココロたんは氏の膝の上に覆いかぶさるように身を乗り出し、マイクに向かって叫んだ。
姿は見えないのにココロたんの心の叫びは聞こえたらしい。
「5つですか?」
と店員さんの声が繰り返した。
「はい、じゃあ5つ下さい」
注文した商品を手渡してくれる店員のお姉さんは声も出ないほどに驚いた表情をしていた。
一人で食すには少しばかり注文数が多いというところにも少しくらい疑問を抱いていたことだろう。
特にメロンソーダの消費量が。
しかしそれ以上に初めて見る極めて特異な車に驚いていたようだ。
もっとも、氏がこの町に住み続けるうちに見慣れたものとなることだろう。
続く
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