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こなたはやっぱり人気者でした
大道寺さんが爆弾騒ぎ未遂を犯したあの日。
なぜ俺たちは電車に乗ってお客さんのところへと行ったかというと、
それは俺たちが開発したこなたをお客さんに売り込むためだ。
と言っても、購入はほぼ確実。
結果次第で多少売れる台数が変動するくらいだ。
もっとも、売り込みは営業さんに任せておけばいいことだ。
お客さんの反応を見て改良点を探る以外に役目は無い。
だから俺たちは遠足気分だった。
大道寺さんははしゃしすぎて不要なおもちゃを持ち込んだくらいなのだから。
肝心のこなたの反応はというと、とりあえず注目を集めることはできたようだ。
大道寺さんが無駄に派手なインターフェイスをごてごてと実装した甲斐あって、
とにかく目立ったからだ。
橋本課長がこなたを取り出して組み立て終わり、
デモを始める頃になるとお客さんが周囲を取り囲んでいた。
後ろから背伸びをしてまで見ようとする程だ。
部屋中にいたお客さんが残らず集まっていたんだろう。
本当は数人の担当者に見せるだけのはずだったのに。
きっとこなたにはお客さんを引きつける魅力があったんだろう。
電源を入れると、昔少年時代に心をときめかされたロボットの起動シーンを
彷彿とさせるようなグラフィックが画面に表示された。
ボタンを押せば何かが発進するんじゃないかと思わせる様な、
計算し尽くされた順序でLEDが華麗に点灯した。
そう、これさえあれば気分はロボットのコックピットだ。
装置の機能は競合他社の製品と決定的に異なるところは何ひとつない。
そんな状況にもかかわらず、お客さんの仕事をする手を止めさせ、
周囲に人を集めさせた『こなた』はある意味かなりすごいのかもしれない、と思った。
みんな面白そうに電源を操作したり、ボタンを触ったりしていた。
大道寺さんが遊びでつけただけの不要な機能が、これほどうけるとは想像もしなかった。
もっとも、必ずしも評判が良かったわけではない。
「もっと安くなりませんか?表示はこんなに派手でなくていいので…」
お客さんがそう言うのはもっともな話だ。
しかし、それでもこなたには人が群がっていた。
「こなた…ですか。良い名前ですね」
お客さんが大道寺さんに話しかけていた。
「ええ、とても気に入っています」
「ゆたかとかにしなかったんですか?」
その言葉を口にしたのはお客さんの方だった。
何やらオタク臭がただよってくる人だった。
「ほぉ~…ゆたかたん…良いですね~…」
「わかりますか??」
「わかりますよ~!」
等という、俺には何の事だか理解できない話をしていた。
どうせまたアニメの話なんだろう。
「ちなみにこなたの後継機種はかがみなんですよ。
そのあとつかさ、みゆきと続くんですよ。
是非シリーズで購入して全キャラコンプリートしてくださいね」
大道寺さんはちゃっかり売り込みまでしていた。
「ところで、次はどのアニメが来そうですかね?」
なんて話で先輩とお客さんが盛り上がっていた。
橋本課長とお客さんの担当者がまじめな話をしているすぐ隣で。
「ところで、次はどんな技術がきそうですか?」
とまじめな話をしているすぐ隣で。
「それにしてもここのノブ、操作しにくいですよね?ちょっと細すぎませんか?」
大道寺さんの話にも、橋本課長の話にもついていけず、
一人でぼうっとしていた俺にお客さんが注文をつけてきた。
「ここはちょうどいいノブが見付からなくてとりあえずこれを付けています。
製品版では改良します」
と俺が答えた。
そんなところに大道寺さんが割り込んできた。
さっきまでアニメ談義で盛り上がっていたお客さんと一緒に。
「いっそのことここのノブは特注で作ってしまおうかと思ってるんですけどね。
どんな形がいいですか?」
と大道寺さんが言った。
「こなたと言う名前にふさわしい物がいいですね」
とオタクさん。元い、オキャクさん
「ほほぉ、やはりそう思われますか?
私もそう思いましてね、実は今北海堂さんに
ノブを彫っていただけないかと打診しているところなんですよ~」
「北海堂さんですか!?あの高い造形技術を持っていることで有名な!?
それはそれは贅沢な作りですね~」
とオタクさんは満足げに笑みを浮かべた。
北海堂といえばフィギュアを作っているメーカーではないか。
食玩のおまけで一躍有名になり、
一般人にまでその名が知れ渡った有名企業だ。
そんなところにノブを作らせるなど、俺も初耳だぞ!!
って言うか、たかがノブ一つにどれほど金をかけるつもりなんだこいつらは!?
「しかし、そうなるともったいなくて触れませんな」
とオタクさん。
「いえいえ、ついつい触りたくなってしまうデザインにしますから。
普段使い用、観賞用、予備、シークレットの四種類を用意しますから」
大道寺さんとオタクさんがムフフと不気味な笑みを浮かべた。
「あの…、普通のノブでいいですから」
こそっと俺に耳打ちしたのは、最初俺に話しかけてきたお客さんだった。
よかった。世の中まともな人もいたらしい。
それにしても、あのオタクさんが課長とは…
俺はひょっとして出世街道から外れているのか?
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