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全世界ネコミミメイド化計画

「じゃあ17時に東京駅で集合ね」
朝、ホテルのフロントでチェックアウトを済ませた後、渡辺さんがそう言った。
展示会でせっかく東京まできたんだから今日は遊んで帰ろうという事になった。
平日のはずなのに仕事もしないで、だ。
会社が出張費を出しているのに、だ。
とんでもない会社だ!
だからと言って俺一人帰る程ばかでもない。
「こんな緩いところが家の会社の良いところだよ?給料安いんだから」
大道寺さんはそう言っていた。
でも逆に考えるとだ、そんな輩が多いから利益も減って給料も少ないのでは…?
なんてふと思ってしまったが口にはできなかった。

「じゃあ連絡用に携帯電話の番号を教えて」
渡辺さんが俺に言った。
「そう言えば沢村さんの番号は僕も知らないかも」
そう言えば大道寺さんの番号も未だに知らなかった。
だから番号の交換をすることにした。
「メールアドレスも知りたい?」
「じゃあせっかくなんで教えてください」
「全世界ネコミミメイド化計画!@docomo.co.jp」
俺は一瞬言葉を失った。
「………今なんて言いました??」
「全世界ネコミミメイド化計画!!@docomo.co.jp」
大道寺さんは少し声のボリュームを大きくして言った。
おかげで少しばかり周囲の視線を集めてしまったじゃないか!
「覚え安いでしょ?ちょうど30文字制限ぴったりなんだよ。
前は迷惑メールが多くて困ってたんだけどね。これに変えたら全く来なくなったよ」
と大道寺さんは鉾らしげに言った。
なるほど、確かにぴったり30文字だ。
そして確かに覚え安い。こんな強烈な標語はそう簡単に頭から離れそうにない。

しかし突然遊んできていいと言われても、俺には全く当てがなかった。
だから大道寺さんと一緒に行動することにしてしまった。
その選択が間違いだったに違いない!
そりゃ東京でオタクが行くところと言えば決まっている。
大道寺さんが聖地と称する場所、秋葉原だ。
秋葉原にも通い慣れているのか電車の乗換まで完全に把握しているようだった。
一体どれだけ秋葉原に通っているんだ!?
新幹線に乗っても数時間はかかる距離に住んでいるのに。
ここで一体何をするのか、って言うかどんなところなのか、俺にはわからなかった。
考えてみればオタクの街でメイド喫茶というものがあるらしい、
と言うテレビで得た知識以外何も知らなかったのだから。
「買いたいものがあるんだよ」
と大道寺さんが最初に入った店は、俺が想像していたのとはちょっと違った。
秋月電子通商、電子パーツを売っている店だ。
俺はこの手の店に入るのさえ初めてだったから新鮮だった。
「何を買うんですか?」
「何って言うか…面白そうなのを」
大道寺さんは嬉しそうに棚をごそごそとあさり始めた。
でも俺には置いてあるものの大部分が何に使うものなのか理解できなかった。
これが仕事だというのに情けない。
「そう言えば、みんなのお土産何が良いと思う?僕はこれなんか面白いと思うんだけど?」
そう言って何かのICを俺に見せた。
「何ですか、これ?」
「何ってマイコンだよ?わからないの??」
そう言った大道寺さんの言葉は少しばかり俺の胸に刺さった。
「これだと1個100円だし、どうかな?」
「でもそんなのもらってどうするんですか??」
「えっ!?どうって…そんなのもらった人次第でしょ?マイコンなんだし…」
そう言われても、俺にはマイコンの有難味が理解できなかった。
と言うよりもこんなものをもらって嬉しいのか??
「でも事務のお姉さんたちはもらっても喜ばないんじゃないですか?」
「そっか…それもそうだね。じゃあお姉さんたちには食べ物にしよっか」

そう言ったはずの大道寺さんが向かった店はアニメイトだった。
その名前からわかるように、大道寺さんがとっても好きそうな店だ。
「あの…食物買うんじゃないんですか??」
「買うよ、ほらここにあるでしょ?」
と大道寺さんが指指したのは確かに食物だった。
「マジですか!?こんなのがあるんですか!!って言うか、
こんなの買っていったらお姉さんたちドン引きですよ!?」
って言うか、あなた正気ですか!?
「いいじゃない、秋葉原らしくって」
「でもこれは…。そもそも俺たち秋葉原に出張に来たわけじゃないんですよ!!」
「いいんだよ、これで!文句言う奴には食べさせなければ!!」
大道寺さんは数箱手に取ってレジに持って行った。
二次元美少女のイラストがぎっしりとかかれた箱に入ったお菓子だ。
こんなものが売っているとは…さすが秋葉原だ…。
そして本当にこんなものを事務のお姉様方に配って回るつもりなのか!?

その後、俺は大道寺さんに怒られた。
「沢村くん、社会人なんだからTPOってものをわきまえた服装をした方が良いんじゃない?」
その言葉だけ聞くともっともらしい。
「その服装は秋葉原にそぐわないよ?」
適当なシャツとジーンズとリュック、つまり大道寺さんの普段着のような服装をしろと、
そう言われていたわけなんだ。
「でも今回は出張で来たわけですから…」
俺はもちろん仕事をするのに相応しい服装をしていたわけだ。当然だろう?
「仕事ばっかりじゃダメだよ?遊ぶときは遊んでリフレッシュしないと。
遊べない人は仕事もできない人だよ?」
なんて言っていた。
そんなことをさ、メイドさんからドリンクに文字を書いてもらって
喜んでるような人に言われてもさ、説得力ないじゃん!
「何事も経験だよ?」
そう言われて行列までして入ったメイド喫茶での会話だ。

「大道寺さん、鞄が尋常でないくらいまで膨らんでますけど、何を買ったんですか??」
大道寺さんは満面の笑みを浮かべて答えた。
「フフフ…、これにはね、無限の夢と希望が詰まってるんだよ」
そうですか、超オタグッズ買い込んだんですね、いつの間にか…。もちろん自腹ですよね??
    

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