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ネコミミ巫女に会社の将来を祈っても無駄なんだよぉ!
「大道寺さん、俺たちはいつから夏休みにするんですか?」
この会社には夏休みという期間が決められていない。
会社はカレンダー通りに営業をしている。
一応有給休暇取得奨励期間というものがお盆を挟んであるだけだ。
けれど仕事が片付かなければ夏休みどころじゃない。
そしてその仕事の具合はリーダーである大道寺さんが把握している。
「僕はね、お盆前の木曜日から宗教上の理由で休まないといけないんだよ。
それ以外の日だったら僕が代わりに出てるからいつでも休んでいいよ」
「宗教って何ですか?その日に何かあるんですか?」
「何言ってるの!?何かってものじゃないでしょ!?聖戦の日だよ!聖戦の!!」
なるほど、オタクが年に二度聖地に巡礼する日か。
お墓参りもしないでどこに行ってやがるんだか。
「その聖戦ってそんなに長い期間あるんですか?」
「ううん、今年は3日だけ。聖戦の前に聖都に行かなきゃいけないからね」
聖都……大方、秋葉原の事だろう。
「お盆って言ってもお客さんの工場がある中国じゃ関係ないんだけどね。
だからトラブルが発生する可能性がないこともないんだけど…
その時は沢村さん、頑張ってね」
「えっ!!マジですか!?トラブルなんて俺一人じゃどうにもならないですよ!!」
「う~ん…まぁ無理かもしれないけれど、何とかなるかもしれないしね。
まぁ良い機会だから一人で頑張ってみてよ」
なんていい加減な事をいいやがる!?
「何かあったら携帯に電話してもいいですか??」
「良いけど、繋がらないかもしれないよ~。何せいろんな電波が飛び交ってるところだから~」
電波!?電波ってなんだ?電波って!!
オタクが密集すると磁界が乱れて電磁波を発するとでも言うのか!?
それとも電波なアニソンが携帯の電波を遮断してしまうのか?
「苦労した分だけ人は成長するんだよ。
苦労は買ってでもしろって言うでしょ?」
「それはつまり俺に苦しめって言っているんですか!?」
大道寺さんはトラブルが発生することを予見しているかのような口ぶりだ。
しかし、お盆はコミケに行くはずの大道寺さんの予定が『出張』になっていた。
目的は『展示会』。場所はもちろん『東京国際展示場』。
「課長…この大道寺さんの出張予定って何ですか??」
「何って見ての通り出張だよ」
出張だと!?違うだろ!!コミケだろ!!!しっかりしてくださいよ、課長!
「それってつまり会社のお金で行くって事ですよね?4泊もして…」
「当たり前じゃないか!出張なんだから」
「課長…展示会ってひょっとしてコミックマー」
俺がそう言いかけたとき、課長はポンと俺の両肩に手を置いて、
大きく首を横にふりながら言った。
「みなまで言うな…」
なんと課長は承知の上で大道寺さんに出張の許可を出していたというのか!?
なぜだ!!なぜあのオタクにそんな事が許されるんだ!?
「大道寺さんは…ビッグサイトに出張って、何をしに行かれるんですか?」
俺は大道寺さんを直接問い詰めてみた。
「何って聖地巡礼だよ。会社を代表していくんだよ。会社の発展を祈りに」
「祈るって誰に祈るんですか!?」
「誰って………巫女さんかな??」
「無理ですよ!!そんなのネコミミが付いたスペシャルな巫女さんでも無理ですよ!!
だいたい、巫女さんに祈るのに5日もかかるんですか!!?」
一瞬俺は鋭い目つきで睨み付けられた。
そしてにこっと表情を変えると大道寺さんはこう言った。
「僕のいない5日間、何事もなく無事で過ごせれば良いんだけどね、沢村さん?」
俺は当然の事を言っているつもりだったけれど、それが大道寺さんの気に触ったのだろう。
脅しともとれるような事を大道寺さんは口にした。
ひょっとして俺は触れてはならないものに触れてしまったのか!?
不自然に微笑んでいる大道寺さんは何かを企んでいるように思えた。
「一応僕のパソコンのパスワード教えておくよ。何かあったら使っていいから」
それを聞いて俺はさらに嫌な予感がした。きっとこの人はトラブルを確信しているはずだ。
そして大道寺さんは突然魔法の呪文を唱えだしたんだ!
「闇の力を秘めし鍵よ、真の力を我前に示せ。契約の元藤隆が命じる、レリーズ!」
「あの…今のがパスワードですか?こんなに長いのをタイプするんですか??」
「そうだよ。でも僕のパソコンは音声認識してくれるから、
タイプするんじゃなくって唱えるんだよ」
マジかよ!?そんな電波な呪文を会社で唱えさせる気なのか!?
しかも、そんなに長いの覚えられねぇよ!!
だから俺はその呪文を紙に書き留めようとした。
「ダメだよ!パスワードをメモするなんて言語道断!覚えなきゃダメだよ!!」
なんて事だ!?
おかげで大道寺さんの魔法の呪文特訓を受ける羽目になってしまったじゃないか!?
って言うか、イントネーションが違うとかどうでもいいだろ!!
それから大道寺さんは首から下げていたピンク色のUSBメモリキーを俺に差し出した。
「何ですか、これは?」
「闇の鍵だよ。これをUSBポートに差し込んでいないと使えないからね」
って言うか、これがあるなら呪文なんて不要じゃねぇかよ!!
と思うのだが、大道寺さんはそうは思ってくれないらしい。
しかし、なぜだ!?いつも遅刻して俺よりも遅くパソコンの電源を入れる大道寺さんが、
こんな呪文を唱えている所なんて見たことないぞ?
どういうことだ!?
もしかして俺にこんなことをさせるためにわざわざ設定しやがったのか!?
笑っていやがるということは、さてはそうなんだな!?
「沢村くん一人で解決できるなら僕のパソコンは使わなくても良いんだけどね」
なんて言われたら大人しく従うよりほかない。
こんな痛いことをしやがる奴なのに、俺よりも技術レベルが高いのは確かなんだから…。
嗚呼、これが実力主義なのか!?
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