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担げ!らき☆すた神輿!!

土日を含めた5日ばかりの夏休みを過ごした大道寺さんは
黒く日焼けして会社に帰ってきた。
「なんかものすごく焼けましたね?海とか行ってたんですか??」
「そんなとこ行くわけないじゃん!コミケ焼けだよ」
コミケ焼け?そんな専門用語があるのか??
「俺良く知らないんですけど、コミケってそんなに健康的なイベントだったんですね。
もっとハードなインドア系のオタオタしいイベントだと思ってましたよ」
「今時日焼けしたから健康的だなんて時代後れな事を言うね、君は。
僕だって好きで焼けたんじゃないんだよ?
けどね、日が昇る前から行列してさ、
屋外のコスプレ広場でレイヤーさんの写真ばっかり撮ってたのに、
日焼止め塗忘れちゃったんだよ」
なるほど、その話を聞けばますますどんなイベントなのか想像できなくなった。
とりあえず、俺の想像を絶する程オタオタしいイベントなんだろう。
「他に秋葉原とか神社参拝とかもしたけどね」
「え?神社ってなんか意外ですね。浅草寺とかですか?」
「どうしてそんな所行かなきゃいけないのさ?埼玉県の鷲宮神社に決まってるでしょ?」
「どうしてって…有名じゃないですか?
でも鷲宮神社ってなかなか渋いところですね。
確か関東最古の大社なんですよね?」
「えっ?そうだったの??」
「あれ?そのために行ったんじゃないんですか??」
「違うよ、アニメの舞台になったからに決まってるでしょ!?」
あぁ、そうか。オタクはそんな事でもないと神社に行かないのか。
一体何を参拝しに行っているんだか。
って言うか、俺がそんなこと知るわけねえだろっ!?
どうせ何のアニメか聞いたところで知っているタイトルが出てくるとも思えないが。
と言うよりもはるばるそんな遠くまで赴くものだ。
情熱と金の無駄遣いだよ。
「って言うか、そういうのって招かれざる客って言うんじゃ…」
「ぅん?そうでもないんだよ。
地元の商工会とかかなり気合いをいれてオタクを誘致してるんだよ。
祭にキャラクター神輿を登場させるくらいだから、
気合いの入れかたは半端じゃないんだよ!!」
何ということだ!?伝統と格式のある由緒正しい神社が
オタクの聖地になり果てるとは…。
金か!?金のためなのか!?
大方金銭感覚の壊れた大道寺さんみたいなおたく共が
惜しげもなく金を落としていくのを期待しているんだろう。
しかし気になるじゃないか、キャラクター神輿とやらが。
呆気にとられて開いた口が塞がらなくなってしまった一般大衆の
呆れ返った顔を見てみたいと思わないか?
そしてそんな視線の中で勇ましく神輿を担ぐ猛者共の姿を!
まぁどうせオタクだろうけれど。

「大道寺さん、ちょっとこれ見てもらえますか?」
大道寺さんの留守中に発生したトラブルを相談してみた。
俺がちょっと手を加えて改造したばかりに動作がおかしくなった装置だ。
「電源入れた直後は正常に動いてるんですけど、
すぐに動作がおかしくなるんですよ」
といった症状だ。
「熱じゃないの?冷却したら動くんじゃない?」
そう言って大道寺さんはうちわを取り出しぱたぱたと装置に風を送りはじめた。
痛かった。それはあまりに痛い団扇だった。
表にも裏にも二次元の美少女がびっしりと何人も描かれていた団扇だ。
それを手にした大道寺さんは満面の笑みを浮かべて嬉しそうだった
大方コミケか秋葉原で入手したばかりのお気に入りなんだろう。
「…普通のうちわじゃ………ダメだったんですか?」
「何言ってるの??このうちわは通常の三倍癒されるんだよ?」
「気のせいですよ!!」
それは特定の人種にしか効き目のない催眠効果ですから!!
「大道寺さん…冷却しても動きませんよ??
って言うか、ノイズがのってますよ??」
「ノイズ?じゃあそれが原因じゃないの??」
「昨日まではノイズなんてのってなかったんですけどね~…」
って言うか、そんな電波なもので扇ぐからノイズがのるんじゃねぇか!!

ふと大道寺さんが席を離れている間、俺は机の上にあるものを見つけてしまった。
大道寺さんの定期入れだ。自転車通勤をしているはずの大道寺さんが、
どういうわけだか定期をもっている。そしてそこには何故かSUICAが入っていた。
関西では例え欲しいと思っても手に入らない代物だ。
だかしかしそれは間違いなく大道寺さんの持ち物だと断言できる。
何故か?そりゃ当然だろう?
アニメのキャラクターが激しく描かれた定期入れをもつ人間なんて
この会社には大道寺さんくらいしかいないんだからさ。
「大道寺さん、どうして定期入れなんてもってるんですか?」
と戻ってきた本人に直接聞いてみた。
「この辺と違って東京は電車が便利だからね」
「そうですか。じゃあこのSUICAは秋葉原専用なんですね?」
だからこんなパスケースが許されるんだな。
アニメキャラが派手に描かれた異様に目立つ痛々しいパスケースがっ!
って子供じゃないんだからさ!!
「もうちょっと社会人に相応しいデザインのはなかったんですか?
これって子供向けですよね??」
「何言ってるの!?大人向けだよ!?子供用なんて100均の安物で十分だよ!!
これは5000円もしたんだよ!!」
なんて事だ!?街中で取り出すことさえ憚られるような無用の長物にそんなに金を出すとは!?
確かに、子供に買い与えるにはいささか高価だ。
「でも、こんなのもってたら目立ちませんか??」
「そうだね、みんな羨ましそうに見ているよ?」
いやいや、それは間違いなく奇異の目で見られているんですよ!
「まぁ秋葉原だと結構普通だから全然目立たないんだけどね」
と少しばかり残念そうな大道寺さん。
って言うか、こんな連中が普通に闊歩しているというのか!?
大道寺さんが聖戦と称するコミケの日に、
聖都と称する秋葉原に集まってくる猛者たちは俺の想像を絶する存在のようだ。
    

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