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社員の生活を応援する世界作りのための奉仕団体

お盆休みを聖地巡礼と称して秋葉原とビッグサイトで過ごした大道寺さんは、
さらに進化して帰ってきた。

『団長』とかかれた腕章を左腕に付けるようになった。
机の上には『団長』とかかれた三角錐型のネームプレートを立てるようになった。
なぜ団長なのか?そんなこと、俺にわかるはずがない。
「それ…どうしたんですか?」
「これ?いいでしょ??秋葉原に売ってたんだよ」
とうれしそうに俺に見せてくれた。
う~ん…こんな訳のわからないものが売っているとは、秋葉原とは謎な街だ。
何がうれしくて団長になりたがるんだか。
「で、何の団長になったんですか??」
「う~ん…そうだね~…。
『社員の生活を応援する世界作りのための奉仕団体』なんて言うのはどうだろう?」
それは明らかに今考えたんだな?
「それは一体何をする団体なんですか?団員は誰なんですか??」
「何言ってるの?もちろん沢村くんが団員だよ??」
「えっ!?俺が含まれてるんですか??入団届けを提出した覚えはないですけど!??」
「大丈夫だよ、宇宙人とか未来人とか超能力者を探してこいなんて言わないから」
当たり前だ!そんな訳のわからない命令をされてたまるか!
まぁしかしここは大人しく引き下がることにした。
大道寺さんに逆らうと俺だけが酷い目に遭う、最近やっとそのことを学んだ。
俺は団員になることに甘んじる事にした。
別に何か不都合な事がある訳ではなさそうだったから。
「でも、団長になると何かいいことがあるんですか?」
「あるよ。団長手当てがもらえる」
「マジですか!?」
と言う俺の問に、大道寺さんは微笑んで返した。
そんな訳のわからない手当てがあるはずがない!就業規則のどこにもそんなこと書いてなかったぞ!
と思いつつもだ。でもひょっとしたら大道寺さんならそんなものをもらっているのかも…
と言う不安は拭いされなかった。

まぁそんなわけで、大道寺さんは団長になった。
大道寺さんがそんな腕章を付けて社内を歩き回るから、
数日も経てば団長の存在は有名を超越して全社員の常識にまでなっていた。
大道寺さんの名前を知らない他部署の社員でも、
「ああ、あの団長さんの事?」
と話が通じるまでになっていた。
『リーダー』
わずか二人ばかりの開発チームだから、わざわざそんな呼び方をすることは滅多にない。
でもこれからは『団長』と呼ぶ必要がありそうだ。
「大道寺さん」
と呼んだら返事もしやがらなくなった!

「団長さんはまた何か新しい物を作る予定とかないのかな?」
廊下ですれ違った社長が俺にそう話しかけてきた。
社長、あなたまでその名で呼ぶのですか…。
それにしても社長が俺に話しかけてくるとは予想外だった。
どうやら団長の大道寺さんだけではなく団員の俺の事までささやかれ始めているらしい。
「さぁ…どうでしょう?とりあえず、次の製品名は『かがみ』にするか、
『みくる』にするかで悩んでましたけど?」
そう、まだ影も形もない製品の名前を考えていたんだ。
「そうか。我々経営統合思念体は、彼が現在我が社が陥っている自律発展の閉塞状態を
打開する鍵となることを期待している」
はぁ。そんな難解な単語を並べて電波な事言われても俺には理解できませんよ?
家の会社もいよいよ終焉の時が迫っているのか!?
大方社長室のスピーカーから年中休みなく超音波のアニソンが垂れ流されているんだろう。
もちろん、誰かの陰謀によって。あの人ならそんなことくらい訳無くやってのけることだろう。
「いや、娘が最近面白いアニメがあるって勧めてくれたから見てみたんだけど、
団長さんもその影響を受けているのかな?」
「社長、差し出がましいようですが、娘さんは道を大きく踏み外そうとしていますよ?」

社長がそんなことを言うものだから大道寺さんはますます調子に乗るんだ!
大道寺さんの強い希望というか、強引な交渉というか、
「気に入らないんだったらいつでも言ってくださいね。すぐに辞めてあげますから」
なんてわがままによって、
我が団にパーティションでしっかりと区切られた専用のスペースが与えられた。
と言うかもはや仕事をするスペースではないような気がする。
いつの間にか俺の机の上には『平団員』と書かれた粗末なネームプレートが設置されていた。
俺は今朝まで会社名の入った平凡なマウスパッドを使っていたはずなのだが、
今はそこで見知らぬ美少女が微笑んでいる。
パーティションの中に専用のカレンダーまで設置された。
大道寺さんがお土産で買ってきたものだ。季節外れのカレンダーは半額で売っていたらしい。
そのカレンダーには本家本元と思しき団長の姿が描かれていた。
大道寺さんの周りをぐるりと囲むように設置されたパソコンや計測器の画面などは、
大道寺さんが席を外すとほどなく異次元の少女たちが映し出される。
ちなみに今まで成人女性が映し出されたところを一度たりとも見たことはない。
もちろんパーティションにはポスターがびっしりと貼られていることは言うまでもない。
私物の扇風機の羽にだってびっしりとステッカーが貼ってあるくらいだ。
マイナスイオンって言うよりも電波を放出していそうな感じだ。
俺以外の人目がなくなったせいで大道寺さんはますますエスカレートした。
まずい!このままでは俺の気が狂いそうだ!!
「ココロたんはあのぺたんこ具合が萌えるんだよね」
などと俺が口走ろうものなら人思いに殺してほしい!頼むから!!
って言うか、大道寺さんはスペースを与えられたというより隔離されたのか?
だとするなら俺は人柱か!?
クソッ!覚えていやがれ、課長め!
大道寺さんの力を制御できるようになったら真っ先に潰してやる!

休憩が終わって席に戻ってみると、俺の机の上に資料が山積みにされていた。
「大道寺さん!これは何ですか!?」
「何って、こなたの資料だよ。この間言ったでしょ?こなたは沢村君に任せるって」
「え…っ?あれ、マジだったんですか?てっきり冗談かと…」
「僕はゆきの開発に専念しなきゃいけないから」
大道寺さんは本気で俺に仕事を押し付けてくれた。
そしていつの間にか新製品の開発と、その名前までが決められていた。
「ところで『ゆき』って何のキャラの名前なんですか??」
    

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